Project 3 (P3)

P3のロードマップ

はじめに

プロジェクト英語3(P3)では、関心事をテーマにグループでプロジェクトを組み、英語で発信するコミュニケーション能力を養います。グループ・プロジェクト、ディスカッション、パネル・ディスカッション、ディベート等のアカデミック・リサーチ・スキルを学びましょう。

P3の到達目標

  • グループ・プロジェクトの立ち上げ

    • 3〜5名程度のグループを組み、ディスカッションを通じて共通の興味・関心・問題意識をテーマとしたプロジェクトを起ち上げることができる。

  • リサーチを通じたプロジェクトの掘り下げと肉付け

    • リサーチを通じてプロジェクトを掘り下げるとともに、他者に対する説得力を向上させるための肉付けを行うことができる。

  • プロジェクト成果の発表

    • グループとしてのプロジェクトの成果を、ディベートやパネル・ディスカッションといった多様なスタイルで英語で口頭発表することができる。

    • プロジェクトの成果をグループとして1つのアカデミック・ライティングにまとめ上げることができる。

Stage 1 グループ・プロジェクトの立ち上げ(Week 1-3)

Stage 1-1 グループを作ろう (Week 1)

自分がP3で取り組んでみたいテーマについて発表し、グループ/クラスで意見交換をしましょう。

  • P1、P2で学んだ発表・ディスカッションの形式を思い出し、進行者が議論をすすめましょう。P3ではグループの進行者をモデレーター、クラス全体の進行者をチェアと呼びます。グループ形成 (2013)

各自の興味・関心を考慮に入れ、グループを決定しましょう。20人のクラスの場合、5人編成のグループを4つ作るのが良いでしょう。なるべく、多様性のあるグループを作るとよいでしょう。

Stage 1-2 グループでテーマを決めよう(Week 2)

  • ディベートとパネル・ディスカッションの両方を行うことを想定してテーマを考えるとよいでしょう。

  • グループのテーマが決まったら、それを細分化し、各自が担当するサブ・テーマを考え始めましょう。

    • サブ・テーマはテーマの切り口と考えてもよいでしょう。

Stage 1-3 グループ・プロジェクトのテーマを発表しよう(Week 3)

各グループ10分程度で発表してみましょう。クラスのチェアが全体の進行(グループの紹介など)を行いましょう。また、グループの中で1人モデレーターを決め、発表の進行をしてください。グループ発表には以下の項目を含めましょう。

  • グループ・プロジェクトの概要(背景、目的など)

  • 各自が担当するサブテーマとその概要

  • グループ・プロジェクトの意義(社会への影響、応用など)

発表の後でQ&Aを行いましょう。オーディエンスとの意見交換を通じて、グループ・プロジェクトのテーマを発展させましょう。

グループで発表を行うときの注意点

スライドの表紙にはグループ全員の氏名をいれましょう。また、スライドのどの部分を誰が担当したのかがわかるように、各ページに担当者の名前を入れると良いでしょう。

P3ではグループのテーマを異なる形式(ディベート、パネル・ディスカッション)で論じます。中間発表では全てのグループがディベートとパネル・ディスカッションの両方を経験しますので、Stage 2-1(ディベートとは)、 Stage 3-1(パネル・ディスカッションとは)を読み、グループのテーマをどのように発展させ、論じるか考えはじめましょう。

Stage 2 ディベート(Week 3-5)

Stage 2-1 ディベートとは(Week 3)

ディベート(debate)とは、あるテーマの是非について、グループ内の話し手が、賛成 (pro / for / favor of / affirmative)・反対 (con / against / opposed to / negative) の立場に分かれて討論し、聴衆などの第三者を説得することを目的とした知的ゲームであり、議論の手法です。

例えば「子供にスマートフォンを持たせるべきではない」というテーマに対しては、賛成側は子供がスマートフォンを持つことにより生じるデメリット(ネット中毒など)を訴え、反対側はメリット(教育系アプリの利点など)を訴えます。ディベートには様々な形式がありますが、授業では両者の「立論(主張の論証)」→「反駁(相手の議論が正しいか検証する)」→「audienceからの質疑応答」→「勝利グループの決定」の流れで行われます。

原則として、ディベートは対立点が明確であればどのようなものでもテーマとなります。「お好み焼きはごはんのオカズになるか否か」「大学生はWindowsではなく、Macにするべきだ」など、最終的にオーディエンスがPro team、Con team のどちらが「勝ち」かを判断することになります。

またディベートにおいて重要な点は、どちらの側の論者になったとしても、それはその個人の実際の思想とは関係がないということです。あるテーマについて、実際には賛成だと思っている人も、反対の論者になったときは、全力で反対の論陣をはる必要があります(逆もまた同じです)。つまりディベートとは、あえて二元論的に意見を対立させ、双方の主張を浮き立たせることで、どうすれば第三者から見た論理的優位性が高まるかの戦略を組み立てるゲームだと言えます。

ディベートを行うと、論理的思考力や批判的思考力(critical thinking)が養われると言われます。個人的な主義主張を訴えるだけではaudienceを説得できないからです。いかに自分の主張を確かな論拠でもって示せるかがポイントになります。

Kennedy Nixon Debat (1960).jpg

Stage 2-2 ディベートのフォーマット

ディベートの役割

5名グループの場合

  • モデレーター(1名)

  • Pro team(2名)

  • Con team(2名)

ディベートを担当しないグループからチェアとタイムキーパーを選び、それ以外の人はオーディエンスとしてディベートに参加します。

ディベートの流れ

ディベートには様々な種類がありますが、一般的には次のような流れになります。

    1. 開会

      • チェアによる開会の挨拶、ディベートの手順の説明、グループの紹介。

    2. 論題(proposition) の提示

      • モデレーターが論題とその背景を説明。

    3. 立論

      • モデレーターがpro team/con teamの論者を紹介

      • proが意見を述べる。

      • conが意見を述べる。

      • モデレーターが双方の意見をまとめる。

    4. 反駁

      • pro/con teamが双方の意見に対して反論を加える。

      • モデレーターが議論の整理をする。

    5. 質疑応答

    6. 投票と結果発表

      • オーディエンスはどちら側の主張により説得力があったかを判断し、1人1票投じる。

      • モデレーターは集計を行い、結果を発表する。

    7. 閉会

      • チェアによるコメントと閉会の挨拶。

その他のやり方として、あらかじめ論題が提示され、その論題に向けてデータや資料を準備し、ディベート当日にPro team、Con team どちらにつくかが決まる方法もあります。どちらの側になってもすぐに議論ができるよう、グループ内での入念なシミュレーションは大切です。

ディベートの進行

次の動画では、ディベートの流れを掴むためにミニ・ディベートが短くなっています。

※ 下記は原稿を作るときの参考にしてください。

【開会】

Chair:

Good morning/afternoon, everyone.

I’m 自分の名前 and I’m chairing this debate session.

Today, we have グループの数 groups.

グループ名 will hold a debate on ディベートのテーマ .

(テーマについて簡単なコメント・紹介を入れる。)

グループ名 , are you ready to start?

Moderator:

Thank you for your kind introduction, チェアの名前 .

(挨拶をする) We would like to start our debate.

I’m 自分の名前 and I’m moderating this debate.

First, I’d like to introduce our group members: メンバーの名前1 , メンバーの名前2 , メンバーの名前3

(メンバーは自分が紹介されたら手を挙げる等のパフォーマンスをするとよい。)

The proposition for this session states: “ ディベートのテーマ .”

First, I would like to talk about some of the issues regarding the proposition.

(テーマを、背景や賛否両論を交えて説明する。)

【Pro/Conチームによる発表】

Moderator:

Now, I would like to ask the pro side to present their arguments.

Pro(賛成側):

Thank you, モデレーターの名前 . My name is 自分の名前 .

(Pro(賛成)側として意見を述べる。)

Moderator:

Thank you. Now, I would like to ask the con side to present their arguments.

Con(反対側):

Thank you, モデレーターの名前 . My name is 自分の名前 .

(Con(反対)側として意見を述べる。)

【Pro/Conチームによる質疑応答】

Moderator:

Thank you. Next, I would like both sides to cross-examine their opponents’ arguments. Please go ahead.

(ProとConが互いに質疑応答をして、討論を展開する。)

※ Moderatorは質疑応答の司会進行をし、途中で話をまとめたりコメントを入れたりして、議論を活発かつわかりやすくしましょう。

【Audienceをまじえた質疑応答】

Moderator:

I’m sorry, but the time is up. May I invite the audience to ask questions?

(ProとConの両側がAudienceより質問を受けて、答える。Audienceは質問する相手を指定することが多い。)

Questioner: (質問者は挙手してください。)

My name is 自分の名前 .

何かコメントを述べる。

I have a question.

(指名して質問する場合は “I have a question for 名前 .” “I have a question for the pro/con side” 等とする。)

Moderator:

Thank you for your question.

メンバーの名前 , would you answer the question?

Questioner:

質問の答えに納得したらThank you.と言って終えましょう。さらに反論したり、自分の意見を述べても構いません。

Moderator: (さらに質問を募集してください。質問が出ない時は指名しましょう。)

Any questions?

How about you, クラスメートの名前 . Do you have any questions?

【勝者の決定】

Moderator:

I’m sorry, but the time is up.

Thank you. That has been a very interesting discussion, but we have to stop here.

Everyone in the audience, could you submit your final judgment for this session?

Those who think the pro side won, please give them a big hand.

Those who think the con side won, please give them a big hand.

(拍手の大きさにより、勝者を決める。)

The winner of this debate is the pro/con team.

Let’s give both teams a big hand.

Thank you very much for your cooperation.

【閉会】

Chair:

Thank you very much.

(ディベート全体、Pro/Con側の議論、オーディエンスからの質問等に関してコメントをする。また、タイムキーパーにコメントを求めてもよい。)

This concludes the debate ofグループ名.

ディベートで使うフレーズ

次の動画では、ディベートでのモデレーターの役割と使えるフレーズを紹介しています。

ディベートのシミュレーション

様々な論題でディベートのシミュレーションをしてみましょう。上記の英語の「進行例」を練習するのも良いですし、まず日本語でやってみて議論の展開方法を練習するのも良いでしょう。

(論題例)

  1. High school students should wear school uniforms.

  2. Our university should cancel classes on public holidays.

ディベートをテーマにした映画

ディベートをテーマにした映画をご紹介します。『グレート・ディベーター 栄光の教室』(The Great Debaters:2007)です。この映画では、アメリカ・テキサス州の黒人大学(historically black colleges and universities)のひとつであるWiley Collegeのディベート部が全米の大学と対戦して勝ち上がっていく様子が描かれています。

ディベートは古代ギリシアの時代から続く人類の伝統ですが、近代以降は知的スポーツとしての競技ディベートが特に欧米の教育機関で盛んに行われるようになりました。ディベートのお題やテクニックを沢山まとめた debate.org のようなWebサイトもあります。

Stage 2-3 ミニ・ディベートをしてみよう(Week 5-6)

各グループ20分程度でミニ・ディベートを行ってみましょう。

先輩の動画を見る PEP @ Youtube

ミニ・ディベート (2013)

Stage 3 パネル・ディスカッション(Week 7-9)

Stage 3-1 パネル・ディスカッションとは(Week 7)

パネル・ディスカッション (panel discussion)とは、あるテーマについて様々な意見を持った複数の討論者(panelist) が公開で討論を行うものです。一般的にはシンポジウムなどでこのような討論形式が用いられる場合が多く、ディベートとは異なり議論の勝ち負けを競うものではありません。

過去には、「琵琶湖の環境を良くするために何ができるか」を専門家、漁師、地域住民の立場から討論した例(PEP Facebook P3動画参照)がありました。議論をスムーズにすすめるためにmoderatorが重要な役割を担っています。またaudienceも加わり議論を展開できる点でもディベートとは異なります。

Panel Discussion with David Platt
Macworld Live discussion panel
Symposium ‘Wrapped in Code’ – Panel #1 ‘On the Invisible Interface and the Future of Politics and Power’


Stage 3-2 パネル・ディスカッションのフォーマット(Week 7)

パネル・ディスカッションの役割

5名グループの場合

    • モデレーター(1名)

    • パネリスト(4名)

パネル・ディスカッションを担当しないグループからチェアとタイムキーパーを選び、それ以外の人はオーディエンスとしてディスカッションに参加しましょう。

パネル・ディスカッションの流れ

パネル・ディスカッションに決まった型があるわけではありませんが、一般的には次のような流れになります。

  1. 開会

    • チェアによる開会の挨拶、パネル・ディスカッションの流れの説明、グループの紹介。

  2. テーマの提示

    • Moderator がテーマとその背景,進行の仕方を説明。

  3. 各panelistによる意見の提示 [第1ラウンド]

    • 各panelistが持ち時間の中で発表を行う。

    • (Panelist 1 の発表→Panelist 2 の発表→Panelist 3 の発表→Panelist 4 の発表)

  4. panelist同士のディスカッション

  5. 各panelistによる意見の提示 [第2ラウンド]

    • 他のpanelistの発表やディスカッションを通じて深まったテーマへの自分の見解を述べる。

    • (Panelist 1 の見解→Panelist 2 の見解→Panelist 3 の見解→Panelist 4 の見解)

  6. オーディエンスとの質疑応答

  7. まとめ

    • Moderator による総評・議論のまとめ

  8. 閉会

    • チェアによるコメントと閉会の挨拶

パネル・ディスカッションの進行

※ 原稿を作るときの参考にしてください。

Chair:

May I have your attention, please? Good morning/afternoon, everyone.

I'm 自分の名前 and I'm chairing this panel discussion. Today, we have グループの数 groups.

I would like to introduce the first panel.

They will hold a discussion on パネル・ディスカッションのテーマ .

(テーマについて簡単なコメント・紹介を入れる。)

グループ名 , are you ready to start?

Moderator:

Thank you for your kind introduction, チェアの名前 .

(挨拶). We would like to start our panel discussion.

I'm 自分の名前 and I'll be moderating this session.

The topic of this panel discussion is "パネル・ディスカッションのテーマ ."

(テーマを、背景をふまえ様々な視点から、簡潔に説明する。)

Now, I would like to introduce the panelists.

From the right side, パネリスト1の名前 , パネリスト2の名前 , パネリスト3の名前 .

(メンバーは自分が紹介されたら手を挙げる等のパフォーマンスをするとよい。)

Each panelist will have 5 minutes to present his or her thoughts.

After that, we will invite questions from the audience. I would like to ask パネリスト1の名前 to speak first.

Panelist 1:

Thank you, モデレーターの名前 .

(名前や立場を述べてから、X分で意見を述べる。)

Moderator:

Thank you, パネリスト1の名前 .

(コメントを付ける。)

Now, I would like to invite パネリスト2の名前 to give his/her talk.

Panelist 2:

Thank you, モデレーターの名前 .

(名前や立場を述べてから、X分で意見を述べる。X分で意見を述べる。)

Moderator:

Thank you, パネリスト2の名前 .

(コメントを付ける。)

Now, パネリスト3の名前 , this is your turn.

Panelist 3:

Thank you, モデレーターの名前 .

(名前や立場を述べてから、X分で意見を述べる。)

Moderator:

Thank you, パネリスト3の名前 .

(コメントを付ける。)

Thank you, all the panelists. We are ready for a discussion on this topic.

(パネリストの発表をまとめる。パネリストにさらなる意見を求める。)

※下の進め方は一例にすぎませんので、自分たちのディスカッションが効果的になるよう、工夫して進めてください。

パネリスト1の名前 , would you like to add your view on this?

Panelist 1:

(約X分で意見を述べる。)

Moderator:

Thank you, パネリスト1の名前 .

パネリスト2の名前 , do you have any comments on that?

Panelist 2:

(約X分で意見を述べる。)

Moderator:

Thank you, パネリスト2の名前 .

How about you, パネリスト3の名前 ? I'm sure you have a lot of things to say.

Panelist 3:

(約X分で意見を述べる。)

Moderator:

Thank you all panelists.

(パネリストの意見をまとめる。) ※ 時間があれば、さらにパネリストから意見や質問を受け付けてください。

Now, we invite all of you in the audience to participate in our discussion. Those who have questions or comments, please raise your hands.

(約X分間で質疑応答を行う。モデレーターは質問者とパネリストを上手くつなぐ。)

Moderator:

Thank you all for making this session very exciting and meaningful.

Let's give a big hand to the panelists.

Chair:

Thank you very much.

(コメントやフィードバックを述べる。また、タイムキーパーにコメントを求めてもよい。)

This is the end of the first panel discussion.

※ 2グループある場合は “Now, I’d like to introduce the second group…” と続けましょう。

Stage 3-3 ミニ・パネル・ディスカッションに挑戦してみよう(Week 8-9)

各グループ20分程度でミニ・パネル・ディスカッションを行ってみましょう。

過去の発表の動画を見る PEP @ Youtube

ミニ・パネル・ディスカッション (2014)

Stage 4 最終グループ・プレゼンテーション(Week 10-14)

Stage 4-1 最終グループ・プレゼンテーションに向けて(Week 10-12)

最終プレゼンテーションでは各グループが約30分を使いグループ・プレゼンテーションを行います。

発表の形式は次のようなものが考えられます。

  • ディベート(持ち時間全て)

  • パネル・ディスカッション(持ち時間全て)

  • ディベートとパネル・ディスカッションの組み合わせ(持ち時間を前半後半に分けて)

  • その他の独創的な方法

ミニ・ディベート、ミニ・パネル・ディスカッションを振り返り、特徴や利点を振り返りましょう。

Stage 4-2 最終グループ・プレゼンテーション(Week 12)

クラスでチェア・タイムキーパーを選出し、会を進行できるようにしましょう。

Stage 5 Term paper(Week 10-14)

Term paperはグループで序論(Introduction)、本論(Main Body)、結論(Conclusion)、参考文献(References)までそろった1冊を仕上げます。

どの部分を担当してもよいですが、各自が800語以上書きましょう。発表の準備と並行して仕上げられるように計画的に書き始めましょう。なお、グループ活動の報告や各自の役割分担を明記した編集後記(Editor’s Note)を1-2ページ程度加えても構いません。

アカデミック・ライティングについてはP4で詳しく取り上げますが、今回はP2で習ったパラグラフ・ライティングを復習し、書いてみましょう。

Stage 6 まとめと振り返り(Week 15)